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令和7年改正公益通報者保護法のポイントについて
2026年10月16日
- はじめに
公益通報者保護法は、2025年6月に改正され、2026年12月1日から施行されることになりました。
改正公益通報者保護法については、既に多くの企業様で対応されているところかと思いますが、改正法の4つのポイント及びその実務対応について、ご紹介させていただきます。なお、以下では、改正前の公益通報者保護法を「現行法」、改正後の公益通報者保護法を「改正法」といいます。 - ①事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
- 改正の内容
現行法11条1項では、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者については、公益通報対応業務従事者を指定する義務が定められています。
改正法では、従事者指定に関する行政措置が強化され、従事者指定義務に違反する場合には、これまでの勧告に加え、「勧告に従わなかったときの命令」(改正法15条の2第2項)、「命令をした場合の公表」(同条3項)、「立入検査権」(改正法16条1項)が定められ、命令に違反した場合や立入検査を拒否した場合には刑事罰(30万円以下の罰金)が課されることになりました(改正法21条2項1号)。 - 実務対応上のポイント
従事者の指定については、既に多くの企業様で対応済みかと思われますが、改正法の法定指針では、単に従事者であることを指定するだけでなく、従事者には守秘義務が課されること及び罰則の適用対象となり得ることを従事者自身にわかるように指定する必要があるとされていますので、注意が必要です。
- 改正の内容
- ②公益通報者の範囲拡大
- 改正法の内容
現行法では、公益通報者は、労働者、退職者及び役員とされていましたが、改正法では、フリーランス(業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを含む。)も公益通報者に追加し(改正法2条1項3号)、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他の不利益な取扱いが禁止されました(改正法5条)。 - 実務対応上のポイント
改正法により、フリーランスも公益通報者に含まれることになりました。フリーランスによる公益通報は、企業内部からの公益通報と比較して件数は少ないと思われますが、それなりの覚悟を持って公益通報が行われることが多く、重大な事象が含まれている可能性は高いように思いますので、フリーランスからの公益通報にも適切に対応する必要があります。
- 改正法の内容
- ③公益通報を阻害する要因への対処
- 改正法の内容
事業者が公益通報をしない旨の合意を行うよう求めたり、公益通報が匿名で行われているにもかかわらず公益通報者を探索したりすると、公益通報が阻害されることになります。
そこで、改正法では、(ⅰ)正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意を行うことを求めること等によって、公益通報を妨げる行為をすることを禁止し(改正法11条の2)、また、(ⅱ)正当な理由なく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることを禁止しました(改正法11条の3)。 - 実務対応上のポイント
(ⅰ)について、公益通報をしない旨の合意はあくまでも例示ですので、公益通報した場合に不利益取扱いを行うことを告げることなど公益通報を妨げる可能性のあるものであれば、上記に違反する可能性がありますので、注意が必要です。
また、(ⅱ)について、正当な理由のない通報者探索が行われた場合は、不法行為の対象となりえますので注意が必要です。
(ⅱ)に関して実務上問題になりうる場面としては、公益通報者から事情を聞かなければ必要な調査を行うことができない場合などがあろうかと思います。この点について、公益通報者保護法に基づく指針の解説では、「匿名の通報について、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したのか等を特定した上でなければ、必要な調査や是正ができない場合に、公益通報に対応する際、法第12条の規定により守秘義務を負う従事者が通報者の特定につながる事項を問うことは該当し得ると考えられる。」としている点が、参考になります。
- 改正法の内容
- ④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
- 改正法の内容
公益通報を理由とする不利益取扱いについては、現行法でも定められているところですが、改正法では、公益通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてなされたものと推定するとされ、立証責任の転換が図られました(改正法3条の3)。
また、公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対して、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(両罰)の罰則が新設されました。また、法人に対する法定刑については、3000万円以下の罰金とされました(改正法21条1項、23条)。 - 実務対応上のポイント
公益通報を理由とする解雇または懲戒については、不利益取扱いが禁止されていますが、改正法により、公益通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてなされたものと推定されることになりましたので、仮に、公益通報後に解雇を行い、解雇無効を理由とする地位確認訴訟になった場合は、事業者側で「公益通報を理由とするものではないこと」を立証する必要があります。
この点、「理由として」の意味については、主たる動機が、公益通報をしたことに対する報復等を目的とするもの認められるか否かにより判断されるとされていますが(東京高裁令和6年8月7日判決)、実際上は、解雇等に至る経緯、解雇等の内容、上記の不当な動機の存在を基礎づける事業者側の言動の有無、他の正当な動機の存在を基礎付ける合理的な理由の有無等の客観的事情から、主たる動機が報復目的か否かを判断することになります。
したがって、公益通報がなされた後に当該通報者に対し、解雇または懲戒の不利益な取扱いを行なう場合は、それらの根拠となる事実関係があるか否かを慎重に判断することになりますので、ご注意下さい。
なお、改正法の審議の中では、解雇及び懲戒以外の退職勧奨、雇止め、嫌がらせ、配置転換についても、立証責任の転換の対象とするかについて議論がありましたが、今回の改正では見送られました。もっとも、配置転換については、付帯決議が盛り込まれており、今後改正される可能性がありますので、ご注意下さい。
- 改正法の内容
- おわりに
紙幅の関係上、ポイントのみのご紹介となりましたが、改正公益通報者保護法では、事業者において留意すべき事項が多々あります。改正法の施行が間近に迫っていますので、この機会に公益通報者保護法で求められる体制整備等について再度ご確認いただき、対応方法等について悩まれましたら、ご遠慮なく当事務所にご相談いただければと思います。