事務所報
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法廷百景
法廷傍聴のススメ
2026年02月10日
- 「法廷」と聞いて,皆様はどのようなイメージをお持ちでしょうか?
一般的なイメージとしては,法服を着た裁判官が高いところに座って,被告人を裁くという,よく刑事ドラマで見られるような風景かもしれません。また,人によっては,裁判官が「静粛に!」と言いながら,木槌を叩いていると思われているかもしれません(木槌は,正式名称「ギャベル」というそうですが,日本の法廷で使用されることはありません。ちなみに,日本では,参議院で開会の際に使用されているそうです。)。 - 最近では,Web会議で裁判期日に出頭することが増えたため,私たち弁護士が法廷(裁判所)に出頭する機会は激減しましたが,証人尋問については,必ず法廷で行われることになっていますので,証人尋問が行われる場合は,法廷に出頭することになります。
- 証人尋問については,これまでの「法廷百景」でも何度か言及されているところですが,意外にも,証人尋問について,「証人尋問は誰でも見ていいのでしょうか?」という質問をいただくことがあります。
憲法82条1項は,「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。」と定めており,同条2項で,裁判所が「裁判官の全員一致で,公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合」を除き,公開の法廷で行うと定められています。
ここでいう「対審」とは,民事訴訟の場合は口頭弁論手続,刑事事件の場合は公判手続を意味しており,「公開」とは,傍聴の自由を認めることを意味すると解されています。
したがって,家事事件や非訟事件等の一部の例外を除き,裁判手続(口頭弁論手続,公判手続,判決)は,誰でも,傍聴をすることができます。 - それでは,このように,裁判を公開の法廷で行うと定められている理由はどこにあるのでしょうか?
この点については,三権分立の観点から考えるとわかりやすいと思われます。
まず,立法は,国民の選挙により選ばれた国会議員により構成される国会が担っています。また,行政(内閣)についても,国会議員から選ばれた総理大臣等の大臣により構成され,また,国会が制定した法律を執行します。このように,立法および行政については,国民の選挙により選ばれた国会議員が法律を制定し,その法律を執行するという点で,国民の民意を反映したものとなっています。
他方,司法については,どうでしょうか。司法を担う裁判官は,司法試験に合格した人の中から任官された人たちではありますが,国民の選挙により選ばれた人たちではありませんので,民主的基盤がないということになります。
しかし,司法は三権分立の一角を担う権力ですので,民意を反映しなくてもよいということではありませんし,民主的基盤がないからこそ,公正に行われ,国民の信頼を得る必要があります。
そこで,裁判官の不当な訴訟指揮や判決を防止し,また,訴訟当事者の公平な弁論の機会を保障するため,「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障」するために設けられた制度が,裁判の公開になります(レペタ訴訟・最高裁平成元年3月8日民集43巻2号89頁)。 - このように,裁判の傍聴は,裁判の公正を確保するための非常に重要な制度となっていますが,一般には,傍聴が自由だということを知っている方は少ないようです。裁判手続では,裁判に参加される方々の人生がかかっていますので,ひやかしにいくようなことはご法度ですが,裁判手続はけして他人事ではありません(当事者にはならなくても,証人になることはあることはあるかもしれません。)。興味がある方は,一度,法廷傍聴に行かれることをオススメいたします。