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弁護士による証拠収集方法
2026年05月21日
訴訟や紛争対応においては、証拠の有無が勝敗を左右します。どれだけ主張が正しくても、それを裏づける証拠がなければ、裁判所や相手方を説得することはできません。
そのため、紛争が生じた場合、まず、企業としては、社内規程や契約書、議事録等の書面、メールやPCのデータ等の自社が保有する証拠を収集・確保し、自社の主張を裏付けるに十分かを検討することになります。そのうえで、自社の保有する証拠では不十分な場合、依頼を受けた弁護士が外部から必要な証拠を収集していくことになります。
以下では、弁護士による主な証拠収集方法として、どのような方法があるかを簡単にご紹介いたします。
- 裁判外での主な証拠収集方法
- 弁護士会照会(弁護士法23条の2)
弁護士が、受任案件について所属弁護士会に照会申出をし、弁護士会が審査したうえで、行政機関や企業等に対して必要な事項の報告を求めるものです。照会先には原則として報告義務がありますので、例えば、金融機関に対する口座残高や取引履歴等の照会、通信会社に対する契約者情報の照会、医療機関に対する診療録の照会等により、多種多様な情報を得ることが可能です。 - 戸籍謄本等の請求(戸籍法10条の2・住民基本台帳法12条の3)
債権回収や相続関係、所在調査等では、戸籍謄本や住民票等の取得が必要になります。弁護士等は、受任案件の遂行のため必要がある場合には、いわゆる「職務上請求」により取得できます。
- 弁護士会照会(弁護士法23条の2)
- 裁判上の主な証拠収集方法
- 訴えの提起前における証拠収集方法
- 訴えの提起前における照会(民訴法132条の2、3)
訴えの提起前であっても、訴えの提起の「予告通知」をした後であれば、被告となるべき者に対して、主張又は立証の準備のため必要であることが明らかな事項について書面で回答を求めることができます。また、予告通知を受け、返答をした相手方は、予告通知者に対して同様の照会を行うことが可能です。
罰則や制裁規定がないため強制力はありませんが、照会を受けた当事者は回答すべき一般的義務を負うと解されています。 - 訴えの提起前における証拠収集処分(民訴法132条の4)
上記①の照会がなされた場合、立証のために必要であることが明らかな証拠について、訴えの提起前においても、後述する文書送付嘱託、調査嘱託、意見陳述の嘱託、執行官による現況調査等の証拠収集処分を裁判所に求めることができます。
- 訴えの提起前における照会(民訴法132条の2、3)
- 訴えの提起後における証拠収集方法
- 当事者照会(民訴法163条)
訴訟係属中に、相手方に対し、主張又は立証の準備のため必要な事項について書面で回答を求めることができます。
強制力はありませんが、除外事由に該当しない限り、訴訟法上の一般的な回答義務があると解されています。 - 調査嘱託(民訴法186条)
裁判所が、官公庁や企業等に対して必要な調査を嘱託し、回答を求める手続であり、当事者の申立てに基づいて活用されます。行政処分記録や医療記録等、当事者では入手しにくい資料の取得に有効です。
強制力はありませんが、正当な拒絶事由がない限り、回答に協力すべき公法上の一般的な義務があると解されています。 - 鑑定嘱託(民訴法218条)
裁判所が、官公署又は相当の設備のある法人に鑑定の嘱託を行う手続であり、当事者の申立てに基づいて活用されます。嘱託先の協力義務については、調査嘱託と同様です。 - 文書送付嘱託(民訴法226条)
裁判所が、文書の所持者に対し、その文書を送付することを嘱託する手続であり、当事者の申立てに基づいて活用されます。文書提出義務があるかないかにかかわらず申立てができますが、調査嘱託・鑑定嘱託同様、強制力はなく、公法上の一般的な協力義務があるにとどまります。 - 文書提出命令(民訴法223条)
裁判所が、文書の所持者に対し、その文書の提出を命じる手続であり、当事者の申立てにより文書提出義務(同法220条)や必要性等が認められる場合に活用できます。文書提出命令に従わない場合、訴訟当事者については、その文書の記載に関する相手方の主張が真実と認められることになり(同法224条)、第三者については、20万円以下の過料に処せられる可能性があります(同法225条)。
- 当事者照会(民訴法163条)
- 訴えの提起前・提起後の証拠収集方法
- 証拠保全(民訴法234条)
訴えの提起前または提起後であっても、訴訟における証拠調べの時期を待っていたのでは証拠調べが不能又は困難になる場合、特定の証拠について、予め調べておくことが可能です。例えば、診療録や会計帳簿などの改ざんのおそれのあるものや公文書で保存年限があるもの、重病の証人等、保全の必要性が高い証拠について認められます。
- 証拠保全(民訴法234条)
- 訴えの提起前における証拠収集方法
このように、弁護士による証拠収集方法には様々な方法がありますが、まずは、企業において、自社に存在する証拠を的確に洗い出し、整理し、弁護士と共有いただくことが重要になります。
紛争になってから証拠を探すのではなく、将来の紛争に備えて、常に証拠が残る形で業務を行って頂ければと思います。