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法廷百景
労働審判制度開始から20年
2026年10月16日
- 労働審判制度は、平成18年4月に開始されました。そのため、本年(令和8年)4月をもって制度開始から20周年を迎えたことになります。
ここで労働審判について簡単に説明しておくと、労働審判とは、いわゆる個別労働紛争(労働者と事業主とのトラブル。未払賃金や解雇などが典型例です。)について迅速に解決するための手続です。手続は非公開で行われ、原則3回以内で終了します。手続においては、裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会により調停(話し合いによる解決)が試みられ、話し合いがまとまらない場合、労働審判委員会が事案の解決のために相当と考える判断(審判)が行われます。審判に不服がある当事者は異議を申し立てることができ、いずれかから異議が出された場合は訴訟に移行しますが、異議が出されなかった場合は審判が確定し、確定した審判は訴訟における判決と同じように民事執行上の債務名義(強制執行の根拠)となります。 - 労働審判では、あらかじめ申立書、答弁書といった当事者の主張をまとめた書面が提出されますが、期日では、労働審判委員会から当事者に対して口頭で質問がなされ、これらに答えていくことが中心となります(口頭主義)。通常訴訟では、質問に対しては「次回期日までに準備書面にまとめて提出します。」といった対応をすることも多いのですが、労働審判では基本的に当該期日内での質疑応答でやり取りを完結させることが想定されていることに特徴があります。
福岡地方裁判所では、制度開始当初、第1回期日の冒頭で当事者双方が自らの主張に関するプレゼンテーションをするという独自の運用がなされていました。現在では、(残念ながら?)かかるプレゼンテーションを行う運用はなくなっていますが、口頭での質疑応答が中心であることにいまでも変わりはなく、労働委員会の心証にとって、口頭でのやり取りが重要であることには変わりありません。
最近では、第1回期日の質疑応答で労働審判委員会が心証をとってしまい、それ以降は専らその心証を踏まえた調停案の協議を行う事例も多いです。そのため、第1回期日までに入念な準備を行い、最初の段階で、労働審判委員会に自らの主張をしっかりと理解してもらうことが極めて重要となります。 - 労働審判の件数は制度開始以降増加し、いまでは全国的には年間3000件を超える高水準で横ばい傾向となっています。近年の個別労働関係の多様化、複雑化に伴う紛争の増加に鑑みると、これが近いうちに減少するとは考え難いところです。そのため、皆様の会社に対して労働審判が申し立てられることも、いつあってもおかしくないといえると思います。
使用者側としては、労働審判を申し立てられる側(相手方側)になることが多く事前の予測が困難なこともありますが、このように、労働審判では事前の準備が非常に重要となります。万が一、労働審判を申し立てられた場合、早めに当事務所にご相談いただければと思います。