法廷百景
刑事事件の身柄拘束について
2020年04月04日更新
- 今回は、昨今のマスコミ報道でも注目を浴びている、刑事事件における身柄拘束について、自身が担当した案件を交えつつお話したいと思います。
- そもそも、刑事事件における身柄拘束は、時系列に沿うと①逮捕による身柄拘束、②起訴前の身柄拘束(起訴前勾留)、③起訴後の身柄拘束(起訴後勾留)の3種類があり、それぞれの拘束期間は①逮捕による身柄拘束は逮捕から最長72時間、②起訴前勾留は最長20日、③起訴後勾留は基本1ヶ月ごとの更新制となります。仮に起訴されない(罪に問われない)場合であっても、最長23日間、被疑者は身柄を拘束されることになります。
- 起訴後勾留については、いわゆる保釈制度が認められていますが、起訴前勾留より前の時点では制度上保釈は請求できません。その代わり、弁護人としては勾留請求をさせないよう担当検事にかけあったり、裁判所が勾留を認めた場合には、準抗告という勾留の取消しを求める手続をとるといった弁護活動を行い、起訴前勾留の身柄拘束を防ぎます。勾留が認められるのは逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがある場合等ですので、これらの活動をする際には、そのようなおそれがないことを丁寧に説明する必要があります。
- 最近私が担当した事件では、勾留が認められてしまった被疑者が、定職に就いているうえに、家に飼い犬がいることが判明しました。私は、被疑者の親御さんから飼い犬の写真を送ってもらい、「仕事も就いていて、こんな可愛い飼い犬が家にいるんだから逃亡のおそれなんかないやろ!」と言わんばかりのトーン(もちろん実際は極めて穏当な文体ですが)で準抗告を申し立てたところ、数時間後に裁判官から電話があり、「ワンちゃん飼われているんですよね…(深呼吸のような音)」というお言葉をいただき、その数時間後には、無事準抗告が認められて勾留を取り消してもらえました(この事件はのちほど被害者との示談も成立しました)。
実際、この事件でどれだけ犬の事情が考慮されたかは分かりませんが、特に勾留などの判断については、様々な事情を挙げて逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことをしっかりと主張していくのが、被疑者を防御する弁護人としての務めであるという、修習時代に学んだことを改めて思い出した一幕でした。