株式の準共有における会社の権利行使に関する同意の有効性について
(最高裁平成27年2月19日判決)
2015年04月01日更新
- 最高裁平成27年2月19日判決をご紹介します。
本判決は,会社法106条ただし書きに関し,株式が準共有され,権利行使者が会社に通知されていない場合に,準共有者のうち1名が権利行使をすることについて会社がなした同意の有効性について判断したものであり,株式の相続の場面において,重要な意義をもつものと思われます。
【会社法106条】
「株式が二以上の者の共有に属するときは,共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。ただし,株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は,この限りではない。」 - 具体的な事情
- X(上告人)は特例有限会社であり,発行済み株式総数は3000株。
- Y(被上告人)は亡Aの妹。亡Aは2000株所有していたが,死亡したので,いずれも亡Aの妹である相続人らY及びBが当該株式2000株を相続し,YとBの準共有となった。
← 前提として,株式が1000株ずつ相続されるわけではないことに注意!遺産分割が整うまでは,2000株全体について,相続人であるYとBが(準)共有することになります。したがって,民法の共有の規定が適用されます。 - Bは,平成22年11月11日に開催されたXの臨時株主総会において,本件準共有株式の全部について議決権を行使した。その余の1000株を所有するCも議決権を行使した。
- Yは,本件総会に先立ち招集通知を受けたが,Xに対し,都合により出席できないこと,開催しても無効であることを通知し,総会に出席しなかった。
- 本件準共有株式について,会社法106条本文の規定に基づく権利を行使する者の氏名又は名称の通知はされていなかったが,X会社は,本件総会において,本件議決権行使に同意した。
- Yが,本件各決議には決議の方法等につき法令違反があるとして,会社法831条1項1号に基づき各決議の取り消しを求める訴えを提起。
- 判決の要点
- 争点
会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされた議決権行使が,同条ただし書の規定の会社の同意により適法なものとなるか。 - 結論
民法の共有の規定に従わない限り適法とはならない。 - 理由
- 106条ただし書は,株式会社が同意をした場合には,共有に属する株式についての権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の適用が排除されることを定めたものと解される。
- そうすると,共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではないと解するのが相当。
- 争点
- 以上によれば,相続人が2名の場合で,遺産分割協議が整わず,意見が合わないときは,いずれの相続人も過半数を有しないため,権利行使はできないことになります。株式の相続により会社の意思決定が遅延しないよう,対策を取っておくことが求められます。