会社法施行規則等の改正と株主総会
2020年12月16日更新
- 2019年12月11日に改正会社法が公布され,それに伴い会社法施行規則等の改正がなされます。2020年9月1日に会社法施行規則等の改正案が公表され,9月30日までパブリックコメントが募集され、提出された意見を踏まえ細かい部分について修正がなされているようです。
施行日は,株主総会資料の電子提供制度に関する改正等を除き,改正会社法の施行日とされており,2021年3月1日と閣議決定されました。
本稿では,来年の株主総会に影響する主な点に絞ってまとめます。 - 来年の株主総会に関連して検討すべき事項
- 取締役の報酬等の決定方針の決定義務(改正会社法361条7項,409条1項,改正施行規則98条の5第1号~8号)
<内容>
- 監査役会設置会社かつ公開会社かつ大会社で有報提出会社または監査等委員会設置会社(以上,上場会社等)における取締役の報酬等の決定方針決定の義務化(経過措置なし)
<対応>上場会社は施行日までに取締役会において取締役の報酬等の決定方針を決定する。また,事業報告への記載義務については[3]を参照。
- 役員等の選任議案(参考書類)の記載事項の検討事項
<内容>
- 役員候補者と親会社等の関係に関する記載(74条3項3号,4項7号ロ,ハ等)
(経過措置 改正施行規則附則2条7項,8項,9項) - 社外取締役に選任された場合に期待される役割の概要を記載(74条4項3号)
(経過措置 改正施行規則附則2条9項) - 補償契約及び役員責任賠償保険の内容の概要について記載(改正施行規則74条1項5号,6号等)
(経過措置 改正施行規則附則2条6項,9項) - 社外取締役を置くことが相当でない理由の削除(改正施行規則74条の2削除)
<対応>→ R3年総会の招集手続を2021年3月1日より以前に開始した場合(株主総会の招集決定の取締役会決議が3月1日以前になされた場合)はなお従前の例による(改正施行規則附則2条9項)。→ 招集手続を3月1日以降に開始した場合(5月,6月総会はほぼこちらと思われる)は次のとおり。I.について
過去「10年間」に親会社等の業務執行者であったことがあれば参考書類に記載。
経過措置により,施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会への参考書類の記載はなお従前の例による(改正施行規則附則2条7項,8項)ため,2月決算の会社は従前のとおり過去5年間について記載し,3月決算の会社は改正施行規則に従う。II.について
社外取締役に選任された場合に期待される役割の概要を記載する。III.について
経過措置により施行日後に締結される契約に適用されるため,2021年3月1日以前に締結された契約については記載義務なし(改正施行規則附則2条6項)。IV.について
経過措置(改正施行規則附則2条7項,8項)により,施行日(3月1日)以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会の参考書類の記載についてはなお従前の例によるため,2月決算の会社で社外取締役を選任しない場合はその理由記載が必要。
なお,社外取締役の設置義務化(改正会社法327条の2)は,経過措置(改正会社法附則5条)により,改正会社法施行(3月1日)後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは適用されないので,2月決算の会社はR3年度事業年度に関するR4年定時株主総会までは適用されないが,3月決算の会社はR2年度事業年度に関するR3年定時株主総会終結時までが不適用となり,R3年総会において社外取締役選任は必須である。 - 役員候補者と親会社等の関係に関する記載(74条3項3号,4項7号ロ,ハ等)
- 事業報告記載事項の検討
<内容>
- [2]のI.の取締役の報酬等の決定方針の決定方法と内容の概要を事業報告に記載(改正施行規則121条6号)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項)。 -
会社役員の報酬等について(抄)
(改正施行規則121条4号イ,ロ,5号の2~6号の3)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項)- 報酬等の種類ごとの総額や業績連動報酬等・非金銭報酬等に関する事項
- 会社・役員の報酬等に係る定款又は株主総会の決議による定めの内容の概要等
- 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定めているときは当該方針の決定方法及びその方針の内容の概要,当該方針に沿うものであると取締役会が判断した理由等
- 取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が当該事業年度の取締役の個人別の報酬等の内容の全部または一部を決定したときは,その旨,当該委任を受けた者の氏名等
- 報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する事項等の記載
(改正施行規則122条1項2号,123条1号)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項) - 親会社との間の重要な財務及び事業の方針に関する契約等の内容の概要の記載
(改正施行規則120条1項7号)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項) - 社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の記載
(改正施行規則124条4号ホ)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項,12項) - 補償契約及び役員等賠償責任保険契約の内容の概要の記載(改正施行規則119条2号の2,121条3号の2~3号の4,121条の2等)
(経過措置 改正施行規則附則2条10項) - 社外取締役を置くことが相当でない理由の記載の削除(現行施行規則74条の2削除)
(経過措置 改正施行規則附則2条11項後段に留意) - 重要な親会社及び子会社の状況(当該親会社と当該株式会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には,その内容の概要)(改正施行規則120条1項7号)
(経過措置 改正施行規則2条11項前段)
<対応>I.について
[2]のI.のとおり,施行日(3月1日)までに決定する必要があるが,2月決算の場合は事業報告への記載は不要(改正施行規則附則2条11項前段)。3月決算の会社は改正施行規則に従い事業報告に記載する。II.III.IV.V.について
経過措置(改正施行規則附則2条11項前段,12項)により,施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告の記載又は記録についてはなお従前の例によるため,例えば2月決算の会社では従前どおり。3月決算の会社は改正施行規則にしたがって記載する。VI.について
経過措置(改正施行規則附則2条10項)により,施行日(3月1日)後に締結された契約に適用されるため,2021年3月1日以前に締結された契約については事業報告への記載義務なし。VII.について
経過措置により,施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告の記載又は記録(改正施行規則附則2条11項前段)及び施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る株式会社の事業報告における改正前の会社法施行規則124条2項の理由(社外取締役を置くことが相当でない理由)の記載又は記録についてはなお従前の例による(改正施行規則附則2条11項後段)ため,12月決算や2月決算の会社のみならず,3月決算の会社もR2年度事業年度において社外取締役を置いていない場合は社外取締役を置くことが相当でない理由の記載が必要である。VIII.について
2月決算の場合は経過措置(改正施行規則附則2条11項前段)により記載不要。
3月決算の場合は改正施行規則にしたがい,当該親会社と当該株式会社との間に当該株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には,その内容の概要を記載する。 - [2]のI.の取締役の報酬等の決定方針の決定方法と内容の概要を事業報告に記載(改正施行規則121条6号)
- 取締役の報酬等の決定方針の決定義務(改正会社法361条7項,409条1項,改正施行規則98条の5第1号~8号)