徳永・松崎・斉藤法律事務所

バーチャル株主総会に向けて

2021年08月16日更新

恩穗井 達也 弁護士

  1.  コロナ禍における株主総会
     2021年の株主総会に関しても,5月総会,6月総会を終えて,多くの会社において株主総会実務は一段落というところではないでしょうか。今年の株主総会も新型コロナ禍のなかでの総会対応ということで,昨年に引き続き,感染防止対策(来場の自粛要請をはじめ,会場における距離を保った座席の配置,消毒の徹底,時間短縮の進行など)を徹底することに主眼を置いたものとなったかと思います。
     このような状況下で,総会会場に来ることができなかった株主のため,株主総会の議事をインターネットにより配信(ライブ配信,事後配信)する対応を始めた会社も増えてきました。
  2.  ハイブリッド型バーチャル株主総会
     経済産業省は,2020年2月,企業がハイブリッド型バーチャル株主総会を実施する際の法的・実務的論点を整理した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公表しています。
     そこでは,リアル株主総会(取締役や株主が物理的な場所において一堂に会して開催される従来の株主総会)と対比して,ハイブリッド型バーチャル株主総会が以下のように分類されています。

    1.  ハイブリッド「参加」型バーチャル株主総会
       リアル株主総会に加え,開催場所に在所しない株主が,法律上の「出席」を伴わずに,インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴ができる株主総会
    2.  ハイブリッド「出席」型バーチャル株主総会
       リアル株主総会に加え,開催場所に在所しない株主が,インターネット等の手段を用いて,株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会
       これらのハイブリッド型バーチャル株主総会については,従来の会社法の範囲でも開催可能とされていましたが,円滑なインターネット等の通信手段を確保する環境整備,来場株主の肖像権への配慮等に留意しなければならず,また「出席」型については,バーチャルでの出席株主の質問・動議,議決権行使について,どのように対応するかといった点に整理すべき課題が存在します。「実施ガイド」においては,これらの課題について,一定の整理がなされているところであり,昨年以降,ハイブリッド型バーチャル総会を開催する会社が増えていました(三菱UFJ信託銀行調査によれば,2020年6月総会の「出席」型実施は9社,「参加」型実施は113社)。
       また,2021年2月,経済産業省は,ハイブリッド型バーチャル株主総会の更なる浸透を図るため,「実施ガイド」について「(別冊)実施事例集」を公表しています。
       そこでは,配信方法,取締役等のバーチャル出席,株主の事前登録,周知方法,肖像権への配慮等の「出席」型,「参加」型いずれにも共通の論点のほか,配信遅延への対応,本人確認,質問対応等の「出席」型特有の論点について,各社の実施事例が紹介されており,実際にハイブリッド型バーチャル株主総会を実施する際には,参考となるものといえます。
       この原稿を執筆している段階では,2021年の総会においてハイブリッド型バーチャル株主総会を実施した会社が,統計上どのようになっているかは把握できていませんが,おそらく今後も,実施を検討する会社は増えていくのではないかと予想されます。
  3.  バーチャルオンリー株主総会(産業競争力強化法の改正)
     従来の会社法のなかでは,株主総会について開催の「場所」を定めなければならないとされており(会社法298条1項1号),物理的な開催場所を定めないバーチャルオンリー株主総会の開催は困難とされておりますが,2021年6月,会社法の特例として,上場会社についてバーチャルオンリー株主総会を可能とする産業競争力強化法が公布,施行されました。
     そこでは,上場会社について,経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けた上で,定款に定めを置くことにより,バーチャルオンリー株主総会の開催が可能とされることとなっています。
     バーチャルオンリー株主総会については,上記「出席」型のハイブリッド型バーチャル総会と同様,あるいはそれ以上に,出席株主の質問等への対応,配信遅延・通信障害への対応,本人確認等の検討すべき課題が存在しますが,こちらについても,今後,導入を検討する会社が増えていくのではないかと予想されます。
  4.  コロナ後の株主総会
     新型コロナの影響がいつまで続くかは見通せませんが,収束後も,以前と全く同様の株主総会の姿に戻るとは考え難く,新たな株主総会の形をそれぞれ模索していくことになろうかと思います。そのなかでは,当然,上記のバーチャル型株主総会の実施も視野に入れて検討してくこととなると思われますが,そこでは,整理・検討すべき法的課題も残されています。今後も日々知識をアップデートしながら,皆さまの株主総会実務をサポートしていきたいと思いますので,引き続き,よろしくお願いいたします。

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