法廷百景
証人尋問の心得
2024年05月16日更新
- 民事訴訟における尋問
民事訴訟では、当事者の主張・立証が揃った段階で、証人尋問(あるいは本人尋問)が実施されることになります。書類等の客観的な証拠では立証できない事項等について、証言という形で立証するということになり、民事裁判の大きな山場ということになります。
尋問は、証人として申請した側が、まず主尋問を実施します。次に、相手方が反対尋問を実施し、最後に裁判所が補充尋問を実施します(補充尋問はなされないこともあります。)。皆さんが証人になったことを想定すれば、事務所の弁護士がまず主尋問を行い、続いて相手方の弁護士が反対尋問をし、最後に裁判官から補充尋問を受けるということになります。 - 尋問までの準備
裁判所で証言できる時間は短時間に限られているため、ポイントを絞った尋問を実施する必要があります。このため、証言をする方の「陳述書」という証拠を作成して事前に裁判所に提出することが一般的です。
裁判所は陳述書の記載内容から証人がどのような証言をするかを想定したうえで証人尋問を実施するかどうかを決定しますし、相手方は陳述書の記載内容から反対尋問内容を検討することになるので、陳述書をどのように作成するかは重要なポイントとなります。もっとも、陳述書は、代理人がヒアリングを行ってその内容をまとめていきますので証人となる方の負担はそれほど大きくありません。 - 証言にあたっての留意事項
裁判での証言にあたってはいくつかの留意点があります。- 裁判官を向いて証言すること
主尋問や反対尋問は、弁護士が当事者側から質問することになるので、証人は横から質問される形になります。反射的に質問した方を向いて答えたくなるところですが、裁判所の方を向いて回答していただかなければなりません。 - 「問い」と「答え」が重ならないようにすること
裁判所での証言内容は録音されており、後日、尋問調書という形で証言の詳細が記録化されることになります。口頭での会話の場合、質問と答えが重なるような場面がよくありますが、証言においては記録化ができなのでタブーです。質問に直ちに答えるのではなく、質問が終わってから、一呼吸入れてから証言する必要があります。 - 質問に端的に答えること
尋問において最も重要な留意点となります。通常の会話では、結論が最後に来ることが少なくありませんが、証言という場面においてはきかれたことに端的に答えていただく必要があります。
例えば、「昨日は何時に帰宅したのか?」という質問があれば、「22時頃です。」と端的に答えていただくことが必要であり、「昨日は1時間残業をして、そのあと友達と飲みに行ったので、自宅に帰ったのは22時頃になりました。」という証言は避けるべきということになります。理由や経緯など説明したくなるところではありますが、何を聞かれているのかを意識して端的に答えることが重要です。
質問されたことに端的に答えない場合、せっかく証言してもらっているのに結論を最後まで証言させてもらえないといリスクがあるほか、裁判所の心証を悪くする可能性もあります。
- 裁判官を向いて証言すること
- 証人となった場合には
民事裁判における証人尋問のイメージはご理解いただけたでしょうか。
尋問の結果で裁判の結論が左右されることもあるという点では負担が大きいことは否定できませんが、証人尋問にあたっては陳述書の作成から主尋問事項の検討、反対尋問への対応等万全の態勢でサポートいたしますのでご安心ください。
一度証人尋問を経験すると、もう一度証言してみたいと思う方が多いといううわさもありますので、証人となる機会があれば我々と一緒に頑張りましょう(笑)。