賃金債権の消滅時効が「当分の間」3年に
2020年05月19日更新
2020年4月1日から施行される改正労基法により、賃金債権の消滅時効は当分の間賃金支払日から3年となりました。
- 議論の背景と今後の展望
もともと、民法では賃金の請求権の消滅時効は1年の短期消滅時効とされていましたが、労働者保護のため、労基法により2年に伸長されていました。
しかしながら、債権法改正により短期消滅時効が廃止され、一般の金銭債権は原則として5年とされたことから、従前は労働者保護のために民法より長い期間を取っていたにもかかわらず、改正後は民法よりも短くなってしまういわゆるねじれ現象が起こり、労働者保護に欠けるとの声も多く、賃金債権も5年とすべきであるとの議論がなされていたところです。
これに対し、2年が突然5年とされることにより企業側の負担が過大となることも指摘されていました。最終的には、条文上5年と明記されましたが、経過措置により「当分の間は3年」に落ち着きました(改正労基法第115条、第143条第3項、改正法附則第2条第2項)。3年の根拠は、記録の保存期間に合わせたものです。
この「当分の間」が経過すれば消滅時効期間は5年となりますので、これを踏まえて今一度労務管理を行い、場合によってはシステムの改修等を検討する必要があります。なお、政府は施行後5年経過後に再検討することとされていますので(改正法附則第3条)、2025年4月以降となる可能性が高いと思われます。 - 適用について
実際に消滅時効期間が3年とされるのは、施行日である2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金です(改正法附則第1条、改正省令附則)。
例えば2020年4月25日に支払われる残業代については、これまでは2022年の4月25日以降は消滅時効にかかっていましたが、その後も1年間は請求可能となります。 - その他
賃金台帳等の記録の保管期間が当分の間は3年となります。
また、付加金の請求期間も延長され当分の間は3年となります。