フリーランス新法について
2025年01月16日更新
- フリーランス新法の施行
2024年11月1日から「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が施行されました。これは発注者とフリーランスの方との取引の適正化を図る(公正取引委員会・中小企業庁担当)とともにフリーランスの方の就業環境の整備(厚生労働省担当)を主な目的とするものです。 - 対象となるフリーランスとは?
新法における「フリーランス」とは、「業務委託の相手方である事業者であり、従業員を使用しないもの」とされています。「従業員を使用」とは、週所定労働時間が20時間以上かつ継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することをいいます。
このため業務委託をするに当たっては、対象となる相手方が「フリーランス」に該当するかどうかを判断するためには、従業員を使用しているかどうかの確認が必要となります。 - 企業(発注事業者)に課せられる義務等
企業が「フリーランス」に対して業務委託を行う場合には、業務委託の期間に関わらず、①~④が適用されます。
①書面等による取引条件の明示(3条)
書面での交付、電子的方法での提供のいずれも可能ですが、書面交付を求められたときは遅滞なく書面の交付が必要です。
②期日における報酬支払(4条)
発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、支払いをしなければなりません。
③募集情報の的確表示(12条)
虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ必要があります。
④ハラスメント対策に係る体制整備(14条)
相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければならないとされ、ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とした不利益取り扱いが禁じられます。
さらに、業務委託の期間が1カ月以上である場合には、⑤禁止行為(5条)が定められ、
ⅰ受領拒否、ⅱ報酬の減額、ⅲ返品、ⅳ買いたたき、ⅴ購入・利用強制、ⅵ不当な経済上の利益の提供要請、ⅶ不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
また、業務委託の期間が6カ月以上である場合には、⑥育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(13条)が定められています。
この配慮義務は、申出に応じて対応を講じることが義務付けられており、申出を受けて検討した結果、実施できない場合には、実施できない理由を説明する必要があります。もっとも、取引先の育児介護等の事由を予め把握して配慮することまでは求められていません。
さらに、⑦中途解約などの事前予告・理由開示が定められています。
中途解約や不更新の場合には30日前までに予告が必要とされ、解約や不更新の理由の開示が求められた場合には開示しなければなりません。 - 法違反行為への対応等
フリーランス新法に違反する事実がある場合には、所管省庁に対してその旨を申告が可能であり、企業は申告したことを理由に不利益取り扱いをすることが禁じられます。所管省庁は、必要な調査(報告徴収・立入検査)を行い、指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表を行うことができるとされています。 - 新法への対応
新法は下請法における規制や労働者に対する保護をフリーランスに対して適用することを定めたものですので、下請法への対応体制が整っている企業においては新法の対応は比較的容易であると考えます。また、労働者に対する保護の配慮については保護の対象が労働者からフリーランスへ拡大することになりますが、既に多くの企業においてはハラスメント対策や育児介護等と業務の両立への配慮への対応がなされていますので、その対象範囲を拡大することによって対応が可能であると思います。
新法の内容についての疑問、実務対応についてお悩みの事項がありましたら遠慮なくお問い合わせください。